体臭にまつわるエピソード（その9）
（※とある女性の手記です）
妊娠すると、ニオイに敏感になるというのは、多くの方が知っている事実である。
タバコのニオイ、食べ物のニオイ、香水のニオイ・・・。炊飯器から発せられるご飯が炊けたニオイがダメだという人も多いようだ。
私はというと・・・大概のニオイは大丈夫、もしくは普通に耐えられるレベルだったので、そういう意味ではまだ軽いほうだったのかもしれない。ところが、決定的に、かつ、致命的に、ダメなニオイが一つだけあった。
夫の体臭である。
これは本当に困った。一緒に暮らしている以上、そしてうちの場合、寝室も一緒であるため、これは避けて通れないニオイなのだ。もちろん妊娠前は多少クサかろうが加齢臭がしようが（笑）あまり気にしてはいなかったし、それで大丈夫だったのだが、妊娠中は本当にダメになってしまった。
デリケートな問題であるが故、妻と言えども、さすがにストレートに言うことは出来なかった。だけど、体や表情は正直なもので、夫のそばにいると、無意識に避けるしぐさや苦悶の表情が出てしまったのだろう。どうやら夫は気付いていたようだ。
何故それが分かったかというと、夫の書斎で、体臭を改善するための本？マニュアル？の類いを、見つけてしまったからである。
夫は夫なりに、妊婦である私を、気遣ってくれていたのだ。それが分かった瞬間、スッと気持ちがラクになった。夫の体臭がダメなのはもちろん変わらなかったが、人間の感覚というのは勝手なもので、夫が気にしてくれていると分かったその嬉しさからか、前ほどは気にならなくなったのである。そのニオイが許せるようになったと言えば、何だか上から目線の物言いではあるが、感覚としてはそういうニュアンスである。
無事子供も生まれた現在は、改めて夫の愛情を感じながら、日々子育てに勤しんでいる。本人の努力のたまものなのだろうか、夫の体臭も、随分と改善されたような気がしている。
