体臭にまつわるエピソード(その15)
(※とある女性の手記です)
体臭というものは、一度気になり始めるととめどなく気になり続けるものだ。
これは、自分の体臭に限らず、他人の体臭でも同じである。鼻のいい私は、おそらく他の人は気付いていないであろうあらゆる人の体臭を感じてしまうため、私に関わるほとんどすべての人に、顔やスタイルなどといったアイデンティティの他に、その人の「ニオイ」という識別子が付与されている。
その中で、珍しく、私をもってしても無臭と判断せざるを得ない男性がいた。
初めは、信じられなかった。自分の鼻がとうとうおかしくなってしまったかと本気で思ったものだ。
いくら若い(当時二十代)とはいえ、特に男性なら、多かれ少なかれニオイはするはずだ。しかし、彼からは本当にニオイを感じなかったのだ。それとなく近寄って、気付かれないようにクンクンやっても、全くニオイが分からなかった。
その状況は、彼と親しい間柄になり、より密接して(笑)ニオイをクンクンしても変わらなかった。彼を好きになった一因として、他の人からは感じられる体臭が、彼からは感じられないという、その特殊性が寄与してしまったことは、素直に認めざるを得ない。
だのに、だのにである。
結婚して、年齢を重ね、お互い四十代の半ばに差し掛かった今、私は彼の加齢臭に悩まされている(泣)。